私、岩崎 梓の大好きな美しいもの、心ときめく音楽。美味しかったもの。 etc...写真を撮りながら気ままにご紹介。よろしくね。


by 岩崎 梓
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「Green」-P.ヴェルレーヌ

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P.ヴェルレーヌに「Green」という詩がある。 
この詩は、作曲家に人気があって
ドビュッシー、フォーレ、アーンなどが曲をつけています。
(アーンは「グリーン」ではなく、「Offrande-贈り物」というタイトルをつけています。)


ひとつの詩に複数の作家が曲をつけるのはこの時代にはよくあることで、
同じくヴェルレーヌの有名な「Clair de lune-月の光」にはやはり
フォーレとドビュッシーが曲を書いています。
しかもドビュッシーは、時間をおいて2曲を書いています。
もう一度書いてみよう、と思わせるのですから作家にとって特別に魅力ある詩なのでしょう。



さて、「グリーン」ですが、
自分のときめくハートを取り出して差し出そうというほどの情熱にかられて
愛するひとのもとへ駆けつける恋人の姿が歌われています。

そのシーンは。。
とても寒い早朝。
朝露に髪が濡れて、そのしずくが額で凍りつく、
というくだりがありますから
まだ、日も上りきらぬうちに走ってきたのでしょう。
足元も露に塗れ、身体も冷えきっているようです。

草地でも駆けて、たどり着いたのはコテージのような家かもしれない。。
想像の膨らむところです。
朝もやが立ちこめ、息せき切って胸いっぱい吸い込む冷たい空気がまさにグリーンに染まっているよう。
エネルギーに満ちたこの朝の世界そのものを、
愛する人に捧げたい気分でしょうか?

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私が練習したことがあるのは、ドビュッシーの作品ですが、
朝の光の輝きに満ちた躍動感あふれる作品です。
スキップのような8分の6拍子に始まり、
中間部のピアノのアルペジオは吹き抜ける風のように輝かしくて、
草を踏んで駆けると、その冷たさに頬が痛いくらいです。
メロディも少し浮かれた恋の気分そのままに、気まぐれのようにうねり、アップダウンします。

後半はまだまどろみの中にある恋人のもとにたどり着いたシーン。。
朝の静寂に満たされた寝室に飛び込むと
室内はほんのりと暖かく、
思わず、愛する人がそこに無邪気に眠っていることの幸せをかみしめます。

冷えきった身体をあたたかな恋人の胸に預け、
「この幸せの嵐が静まるまで、君が休んでいる間このまま眠らせて。。」とつぶやくようなフレーズで曲は終わります。




この詩について、練習に付き合ってくれたピアニストさん(仮にミドリさん)と話していたときのこと、
私がふと、「ヴェルレーヌは男子とばかり付き合っていたらしいから、
自分の体験から書かれた詩なら、ベッドで寝ているのは男子だネ」
というと、え!っと叫んで眉をひそめました。
ミドリさんは、熱心なカトリック教徒です。
そーゆーのはダメ、と目をつぶって首をふります。

ダメ?と聞くと「ダメ!」だそうです。
あまり突っ込んで、もう弾かないと言われたら困るので
触れないことにします。
弾けないものだらけになっちゃう。。

朝の清浄なエネルギーと、胸にわき上がる恋心の躍動が一体となって
移ろいやすいオーロラのような色彩を描いているこの一曲をを楽しむのに、
恋の相手の性別はあまり、重要ではないでしょう。

また、もしかしたら若い男女の情景を描いたものかもしれませんし、
この詩を書いた頃、ヴェルレーヌはまだランボーと蜜月にあったそうですから、
仮にヴェルレーヌが、若い恋人のもとへ
うきうきとスキップしていったのだとしても
それも、なかなかによい光景です。



そして。
ミドリさんの演奏は、ダメ!と言ってはいたものの、
とても情熱的でダイナミック、私の声が消し飛ぶほどでした。
しかも音色も艶っぽく美しく、
未熟な私にはとてもチャレンジングなこの曲を、存分に楽しむことができたのでした。

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by leventmurmure | 2011-09-16 20:25 | musique