私、岩崎 梓の大好きな美しいもの、心ときめく音楽。美味しかったもの。 etc...写真を撮りながら気ままにご紹介。よろしくね。


by 岩崎 梓
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ふたつの「薔薇の精」--その1

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冬のさなか、H.ベルリオーズの「夏の夜」を聴く。
この6曲からなる歌曲集は、
ベルリオーズが友人T.ゴーティエの詩集「死の喜劇」の中から6篇を歌詞とした、ピアノとメゾソプラノ、あるいはテノールのための曲集である。
6曲のなか、とくべつに心を奪われるのは私にとってやはり第2曲の「Le spectre de la rose」
たいていは、「薔薇の精」と訳されているが、詩の内容からすると「精」というよりは
「亡霊」「お化け」といったほうがよいかも。。

ざっくり訳すにはデリケートかつ格調高いこの一篇。
おそるおそる、そうっと訳してみましょう。


 Le spctre de la rose--薔薇の精
 
 君の閉じたまぶたをあげておくれ
 清らかな夢を映すそのまぶたを
 僕は薔薇の精
 君がゆうべの舞踏会でつけていた薔薇
 君は、じょうろの銀のしずくをまだまとったままの僕を摘み取り
 星のきらめく舞踏会の中
 一晩中僕を連れて歩いたね


 おお、君が僕に死をもたらした
 もう逃れることはできない
 僕は毎夜君の枕元で踊るだろう
 でも怖がることはない 
 僕はミサも哀悼歌もいらない
 この軽やかな香りが僕の魂
 僕は天国からやってきたのだ


 僕の運命は羨まれるほどのもの
 この美しい定めを手に入れるため
 幾人の者が命を差し出すことだろう
 なぜなら、君の透き通るほど白い胸が僕の墓
 僕はそこで憩うのだ
 一人の詩人がキスとともにこうしるした
 「一輪の薔薇ここに眠る
  すべての王が羨むであろう一輪の薔薇が」



ゴーティエは当時ドイツから翻訳輸入されて人気を得ていたホフマンの影響を受け、
後にはスウェーデンボルグの影響も受けたといわれる。
また、ロマンティックバレエの代表作「ジゼル」の脚本を手がけたのもゴーティエである。
「死の喜劇」は1838年、「ジゼル」は1841年の作品。
時は19世紀のフランス幻想文学の幕開けの頃です。

「ジゼル」は悲恋の果てに亡くなった村娘ジゼルが、自分を捨てた公爵アルブレヒトをあの世に引き込んでゆくお話。
いわゆる「化けて出ちゃうよ〜」というスタイルですね。

この詩「薔薇の精」もまた、目に見えぬ世界「亡き者」たちの世界のひそやかな気配が香り立つような美しさにあふれている。
薔薇の精は文字通りまどろみの中にある少女に語りかける。
が、枕元でのささやきは少女に大人の世界への目覚めを促しているようでもある。

さっそく演奏を聴いてみましょう。
後に作家自身によって編曲されたオーケストラ伴奏版で。
このオーケストラ伴奏はとても美しく、ピアノ伴奏より曲に合っていると思う。
往年の名ソプラノ、レジーヌ•クレスパン。アンセルメ指揮のスイス•ロマンドオーケストラの演奏で。



自然できちんと美しいマダムのフランス語、
つやっとした歌声そのものが、たっぷりの絵の具を含んだ絵筆でさらりと描かれた大輪の薔薇のよう。
アンセルメ、スイス•ロマンドオーケストラの演奏も、繊細にして色彩豊か。
細い糸を束ねたような柔軟さが猫の足取りのようだ。。
ヨーロッパ的エレガンスが満載で、
軽き薔薇の香りに誘われて異空間に迷いこんでしまいそうな陶酔感を覚える。

この曲集は他の曲もそれぞれにドラマッティックで素敵なので
また取り上げてみたい。




ーーーもうひとつの「薔薇の精」は次回にーーー
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by leventmurmure | 2012-01-29 22:10 | musique