私、岩崎 梓の大好きな美しいもの、心ときめく音楽。美味しかったもの。 etc...写真を撮りながら気ままにご紹介。よろしくね。


by 岩崎 梓
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この世にパーレただ一人

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今日の空はマットな薄いグレー。
外を見ても時間がよく分からない感じの空。お昼を過ぎても気温が上がる気配もなし。。
風もなく、空気が冷たくピンと張って静寂を守っている。

そわそわと不安がわいてくるような、ちょっと苦手な空模様を眺めていたら
ふと、思い出した童話。
「この世にパーレただ一人」というお話があった。ような気がする。。
子供の頃の気に入りの童話全集に入っていて、繰り返し読んでもらったはずだ。

早速検索してみると
シースゴールという北欧の作家の書いたお話だった。

主人公のパーレという男の子(自分に重ねていたらしく私の記憶の中では女の子だった)が、朝目覚めるとだーれもいない。
家の中にも外にも人も車もいない。
そこでパーレはしーんと静まり返った街に出かけて、この時とばかり普段できないことを片っ端からやって見る。
お店でお菓子を勝手に食べたり、車や飛行機を運転してみたり。。。
記憶が定かでないが、しかし、子供一人では日常生活はままならないのであった。
そこで、目が覚める。
みたいな軽い教訓付きのオチで終わったと思う。

しかし、私の心にくっきりと焼き付いているのは、そのストーリーではなくて、
パーレが一歩街に踏み出して行った時の不自然な静けさだ。
今日の空のようなちょっとぴりっとした緊張とおそらくは寒さ、
現実味のない不安がもやのようにわき起こってくる気配。
街なかというのに、何の物音もしないという不穏な空気が全編にうっすらと漂っている。

大人になってから、
ジョルジョ•デ•キリコの有名な「街の神秘と憂鬱」という絵をを初めて見た時、
あ〜これ、パーレの世界だ!!と驚いた。
誰もいない通りを女の子が輪っかを棒で回しながら走ってゆく後ろ姿が描かれた絵である。
絵画の方は、実際には日差しの陰影があって寒くもなさそうだし、南国風のアーチのある建物の向こうには人影も見えているから「ただ一人」ではない。
だが、あのしんとした無音無風の張りつめた空気は私の印象の中のパーレの世界にとても近かった。
人気のない通りに、女の子の回す輪っかの音がカラカラと響くかもしれないが、それもすぐに静寂の中に吸い込まれて消えてしまう。。
一人駆ける女の子がどこから来てどこへ行くのか、
一人遊びを楽しんでいるのか、その感情もよくわからない。
見慣れた現実が突然夢の世界にすり替わってしまったような不安感が、パーレの世界にぴったり重なるようだった。


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ちなみにこちらのブログで、このお話の感想を子供に聞いたお母さんのエピソードが面白かった。(検索中に発見)
こんなことが起きたらどうする?と尋ねると
女の子は、「お米を作ったりお裁縫をしたり、お仕事をする」
と答え、
男の子は、「お店からプラモデルをかっぱらってきて好きなだけ作る」
と答えたそうだ。
女の子の出来過ぎた答えはよく聞くと、幼稚園の先生と話し合った結果の答え、
男の子は「かっぱらう」と言う時に、「悪いことだけどいい?」と前置きして口ごもっていたのだそう。
可愛いですね〜。

それから、その記事に対するコメントも興味深かった。
「私はこの本を親にプレゼントされて深く深く傷つきました。自分はこれくらいわがままな人間だと思われていると知り、泣いた。」
というものだった。
これには、ちょっと驚いた。
幾つぐらいのとき、そんなにも傷ついたのかわからないが、
小さくても「自分はわがままなのかもしれない」という気持ちがすでにあったからこそ傷ついたのでしょうね?
ひとは一体幾つくらいから「自分はわがままなのかもしれない」なんてことを思い始めるのでしょう。

そして、自分の子供の時のことを振り返ってみると、
「パーレ」を読んでもらっては、なんとも言えぬ不安と寂しさにとらわれた私は
「何故、母はこんなに怖いお話を私に読んできかせて平気でいられるのだろう」と、軽い怒りを覚えたのをふと思い出した。
読んでとせがんでおきながら、聞いたらやっぱり怖かった。。のでしょう。
私の場合、逆ギレとは違うかもしれないけれど、少なくとも「わがままなのかもしれない。。」などとは思わなかったようで、ただわがままだったみたいですね。

私の中で、ちょっとシュールな印象の童話。でした。
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by leventmurmure | 2011-12-14 22:22 | book